『ROOM』

ルーム(字幕版)

ルーム(字幕版)




施錠された狭い部屋に暮らす5歳の男の子ジャックと、母親ジョイ。彼女はオールド・ニックによって7年間も監禁されており、そこで生まれ育った息子にとっては、小さな部屋こそが世界の全てだった。ある日ジョイは、オールド・ニックとの言い争いをきっかけに、この密室しか知らないジャックに外の世界を教えるため、そして自身の奪われた人生を取り戻すため、部屋からの脱出を決心する。




アイルランド出身の作家エマ・ドナヒューのベストセラー小説「部屋」を映画化。

ジョイ役のブリーラーソンがアカデミー賞を受賞したことでも有名。


犯人と親子の手に汗握るサスペンス...!かと思いきや、母と子の絆をテーマにした心が温かくなる感動作でした。
子供がいない私でも、つい母親の気持ちに感情移入して泣いてしまった。子を持つ母親が見たらどう想うのだろう。


なにより、ジャック役のジェイコブ・トレンブレイくんが凄い。とにかく凄い。監禁生活の中のジャックは、髪が腰の辺りまで伸びきってしまっている。これは作品の為にカツラを被っているらしいのだが、ロングヘアのジェイコブくんは完全に女の子なんです。しかも可愛いすぎる。
美少女のようなビジュアルもさることながら、子役とは思えない抜群の演技力には圧巻。
特に、5歳にして初めて世界を見たときの眼差しがキラキラしてて、彼の瞳から目が離せなくなる。

物語の終盤、彼は母の為に一度も切ったことのない髪を切る決意をする。
おばあちゃんに髪を切って貰い、画面に飛び出してきたのはなんと眼を見張るくらいの美少年。
衝撃を受けた。ついさっきまで少女のように可愛かった子が、端正な顔立ちの凛々しい美少年になっていたのだから。天使って本当に居るんだな...って、思わず溜息が溢れるくらいの美しさ。

このジェイコブくんの魅力を最大限に引き出す脚本と構成にも脱帽。所謂『お涙頂戴』的な演出はほとんどないのに、3回は必ず泣きます。ルームを脱出したあとが、この作品の醍醐味。
ルームでのジャックは、小さな納屋が世界の全てであり外の世界を知らない。そんな少年が、ある日突然新しい世界を目の当たりにしたら。
戸惑いながらも徐々に世界に順応していくジャックの姿を見ているだけで、目頭が熱くなるんです。


個人的に泣いてしまった印象的なシーンをいくつか。

・親子を見守るおばあちゃんとおじいちゃん
ジョイが監禁されている7年間、外の世界では当たり前なのだが時間は流れ、色々な出来事があった。その一つが、ジョイの両親の離婚。ジョイの母(ジャックのおばあちゃん)は、新たな男性と再婚し同居しています。
ジョイとジャックが帰ってきたことにより、家にはジョイの母、父、母の再婚相手が集う。なんとも複雑な構図。中でもジョイの本当の父親は、犯人との子供であるジャックを受け入れることができず、ジャックと目を合わせることもできない。このシーンが凄く辛いです。
一方のジョイの母と義父は、親子を優しく見守り、まさに理想の『おじいちゃん』と『おばあちゃん』。
特に感動したのは、ジャックがおばあちゃんに髪を切ってもらうシーン。髪は自分の強さの源だけど、今はママが元気になるようにそれを送ってあげたいと言うジャック。ジャックは髪を切ったら痛いのではとビクビクしていたが、おばあちゃんはママの髪も切っていたのよと話をしながら、彼のポニーテールを切り落とす。
「あなたの髪を切りたいとずっと思っていたのよ。」というおばあちゃんに「大好きだよ、おばあちゃん」と、ジャック。涙が止まりませんでした。


・ママの自殺未遂
訴訟にかかる手っ取り早く作る為に、テレビのインタビューを受けるジョイ。『どうしてジャックが生まれた時に、ニックに子供をどこかに連れ去ってもらわなかったの?病院にジャックを置き去りにすれば、ジャックはきっと普通の生活をすることができたはずでは?』というインタビュアーの残酷な質問に、ジョイは深く傷付き鬱状態になり、浴室で薬を服用し自殺未遂。幸い一命は取り留めたものの、暫く入院することに。その間おじいちゃんとおばあちゃんと暮らすことになったジャックは、どんどん強くたくましい少年に成長。帰って来たジョイは『ダメな母親だよね』と自分を責める。そんなジョイにジャックは、『でもママはママだよ。』と迷いなく答えた。思わず涙を溢すジョイに、見ているこちらもつられて泣いてしまう。どんな人間でも、子供にとってはママ。ジャックはきっと、そんなママが大好きで『当たり前』の存在なんだなぁと。


・再び『ルーム』へ
ラスト、ジャックは5年間過ごした納屋へ行きたいと言う。ジョイとジャックは久しぶりに納屋へと赴き、この空間との別れ告げたところで結末を迎える。納屋を見て、ジャックは『ここが部屋?小さくなっちゃったのかな?』と言う。それは、ジャックが本物の広い世界を見て大きくなったから。区切りをつけて、新たな幸せを踏み出した親子の姿に感動。


どのシーンも甲乙つけ難いくらいに素晴らしく、胸がいっぱい。間違いなく今年ナンバー1の作品になると思います。